基礎編9:猫が犬を嫌いなのか、犬が猫を嫌いなのか、それが問題だー「名詞の格と格変化」
学習目標:
● 格の仕組みを知る。
● 4つの格の違いと使い方を知る。
前回は名詞の性について学びました。ドイツ語の名詞には男性・女性・中性の性別があり、定冠詞「der, die, das」をつけて表されましたね。今回は名詞を「が、の、に、を」のどの意味で使うかによって、定冠詞の形が変わるという「格変化」を学びます。これが分かると、「誰が何をするのか?」、「誰が誰に対してアクションをするのか?」を正しく読み取ったり、述べることができるようになります。
1.「格」とは何か?
まず、例文を見ていきましょう。ドイツ語ではプレイヤーのことを「Spieler」(シュピーラー)といいます。基本的に男性のプレイヤーを指すので、der Spielerです(女性のプレイヤーの場合はdie Spielerin=シュピーラーリン)。以下の文の2番以降は、Spielerの頭にある定冠詞derが変わっています。日本語訳を見て、なぜ変わっているのか推測してみてください。「Spieler」という名詞が、どういう意味で使われているかがヒントです。テキストトゥスピーチの音声も聞いてみてください。
1) Der Spieler mit den meisten Punkten gewinnt das Spiel.
最も多くの点を持っているプレイヤーが、ゲームに勝利します。
2) Die Karte des Spielers wird verdeckt gelegt.
プレイヤーのカードは、裏向けで置かれます。
3) Ich gebe dem Spieler die Karte.
私はそのプレイヤーにそのカードを渡します。
4) Wählen Sie den Spieler aus, der beginnen soll.
スタートするプレイヤーを選んでください。
いかがでしょうか?もう少しわかりやすくするために、意味的に対応する部分をマークしてみます。
1) Der Spieler mit den meisten Punkten gewinnt das Spiel.
最も多くの点を持っているプレイヤーが、ゲームに勝利します。
2) Die Karte des Spielers wird verdeckt gelegt.
プレイヤーのカードは、裏向けで置かれます。
3) Ich gebe dem Spieler die Karte.
私はそのプレイヤーにそのカードを渡します。
4) Wählen Sie den Spieler aus, der beginnen soll.
スタートするプレイヤーを選んでください。
「der Spieler」(デア・シュピーラー)は「プレイヤーが」、「des Spielers」(デス・シュピーラース)は「プレイヤーの」、「dem Spieler」(デム・シュピーラー)は「プレイヤーに」、「den Spieler」(デン・シュピーラー)は「プレイヤーを」の意味で使われていますね。
日本語の格助詞「が、の、に、を」にあたるものですが、ドイツ語では主に冠詞の形を変えて表されます。名詞は文の中で主語として使ったり、目的語として使ったりしますが、名詞をどの役割で使っているか?をあらわすのが「格」です。英語には主格・所有格・目的格がありますが、ドイツ語の格は4つあります。詳しく見てみましょう。
2.4つの格の基本的な用法
日本語の格の名称は、主に数字と漢字の二つがあります。かつては漢字を使って「主格・属格・与格・対格」と呼ぶのが主流でしたが、現在では数字で「1格・2格・3格・4格」と呼ばれることが多いです。ドイツ語の名称も一緒に見ておきましょう。
1格(主格:Nominativ〔ノミナティーフ〕)
①「~は/~が」(主語として使う)
Der Spieler mit den meisten Punkten gewinnt das Spiel.
最も多くの点を持っているプレイヤーが、ゲームに勝利します。
→動作や状態の主体をあらわす。「誰が」、「何が」にあたる言葉。
Der Spieler mit den meisten Punkten gewinnt das Spiel.
最も多くの点を持っているプレイヤーが、ゲームに勝利します。
→動作や状態の主体をあらわす。「誰が」、「何が」にあたる言葉。
②「~です・である」(述語〔補語〕として使う)
Ich bin Angestellter. 私は会社員です。
→主語とイコールで結ばれる言葉。ここでは「ich=Angestellter」というイコールの関係なので格は変わらない。ドイツ語では主に「述語」と呼ばれるが、英語の「補語」にあたる。ちなみに職業や国籍を述語として使うときは冠詞は付けない。
2格(属格・所有格:Genitiv〔ゲニティーフ〕)
「~の」(付加語として所有を表す)
Die Karte des Spielers wird verdeckt gelegt.
プレイヤーのカードは、裏向けで置かれます。
→die Karteは1格で、des Spielersが2格の部分。男性名詞と中性名詞の2格には名詞の語尾に「-s」か「-es」が付く。日本語とは語順が逆になるので注意。英語のofのように、後ろから前の名詞につながる。例えば「Return of the Jedi」で「ジェダイの復讐(帰還)」になるのと同じ。
Die Karte des Spielers wird verdeckt gelegt.
プレイヤーのカードは、裏向けで置かれます。
→die Karteは1格で、des Spielersが2格の部分。男性名詞と中性名詞の2格には名詞の語尾に「-s」か「-es」が付く。日本語とは語順が逆になるので注意。英語のofのように、後ろから前の名詞につながる。例えば「Return of the Jedi」で「ジェダイの復讐(帰還)」になるのと同じ。
3格(与格・間接目的格:Dativ〔ダーティーフ〕)
「~に」(主に間接目的語として使う)
Ich gebe dem Spieler die Karte.
私はそのプレイヤーにそのカードを渡します。
→主に「~に」の意味で使う。ここでは「geben=渡す」という動作を直接受けるのは「die Karte=そのカード」の方で、「dem Spieler=そのプレイヤーに」は、間接的に挿入されているものと考えたらよい。「その」の「の」は2格ではなく、定冠詞が持っている意味(特定のニュアンス)。helfen(ヘルフェン=助ける)など、動詞によっては、「~を」の意味で3格目的語を取るものもある。
Ich gebe dem Spieler die Karte.
私はそのプレイヤーにそのカードを渡します。
→主に「~に」の意味で使う。ここでは「geben=渡す」という動作を直接受けるのは「die Karte=そのカード」の方で、「dem Spieler=そのプレイヤーに」は、間接的に挿入されているものと考えたらよい。「その」の「の」は2格ではなく、定冠詞が持っている意味(特定のニュアンス)。helfen(ヘルフェン=助ける)など、動詞によっては、「~を」の意味で3格目的語を取るものもある。
4格(対格・直接目的格:Akkusativ〔アクザティーフ〕)
「~を」(直接目的語として使う)
Wählen Sie den Spieler aus, der beginnen soll.
スタートするプレイヤーを選んでください。
→「~を」の意味で使う。動詞の表す動作や行為を直接受ける言葉。ここでは目的語「den Spieler」(そのプレイヤーを)が、「aus|wählen=選び出す」という動作の対象になっている。fragen(フラーゲン=尋ねる)など、動詞によっては、「~に」の意味で4格目的語を取るものもある。
3.格変化の全体像ー男性、女性、中性、複数でそれぞれ違う変化(一部は同じ)
次に定冠詞を例として、格変化の全体像を見てみましょう。例文では男性名詞のみ取り上げましたが、女性名詞、中性名詞、複数形も、それぞれ格によって冠詞の形が変化します。以下が変化をまとめた表です。テキストトゥスピーチの音声も聞いてみてください。
表の名詞のうち、「das Haus」は「家、建物」の意味で、「die Häuser」(ホイザー)は「das Haus」の複数形です。
原則として、男性名詞と中性名詞の2格には、名詞の語尾に「-s」または「-es」がつき、複数形の3格には名詞の語尾に「-n」がつくので、その部分は赤字にしています。「des」と「-s, -es」が、「den」と「-n」がなんか対応している、という感じです。
定冠詞は、「その~、あの~、例の~」という意味で、名詞を特定するときに使います。文脈によっては訳さないこともありますが、「der Spieler」で「そのプレイヤーは/が」の意味になります。繰り返しになりますが、「その」の「の」は2格の意味ではありません。日本語で格を見るときは、名詞の直後を見る必要があります。「der」だけで、「その~は」という意味があるということです。
ドイツゲームの説明書を読むときにも、「誰が(何が)、誰に(何に)、誰を(何を)、どうしているか」という部分を見分ける必要があるので、ちょっと練習してみましょう。先ほどの変化表の日本語訳をバラバラに並べているので、ドイツ語に対応するものを空欄に分類してみてください。
選択肢:
↓ ↓ ↓ 解答はコチラ ↓ ↓ ↓
名詞の性と数(男性・女性・中性・複数)と格(が・の・に・を)に合わせて、定冠詞と名詞の一部が変化するという点は理解できたでしょうか?カタカナ発音は以下になりますが、テキストトゥスピーチの音声を聞いて、一緒に発音してみてください。
4.冠詞がないとき、あるいは、冠詞が変化しないとどういう不都合があるのか?
Katze hasst Hund.
このままでは「猫、犬、嫌っている」という感じですが、格を表す「が、の、に、を」をつけてみるとどうなるでしょうか?
まず、「猫が犬を嫌っている」と言えますが、もう一つ訳し方があります。「猫を犬が嫌っている」です。ドイツ語では、文のはじめに主語以外の言葉も置くことができるので、「主語+動詞+目的語」ではなく、「目的語+動詞+主語」という順番も可能です。
語順としては「動詞は二番目」が原則ですが、それ以外の言葉は割と自由に並べられます。なので、冠詞の形を変えて、主語や目的語など「どういう意味で使っているのか」をはっきりさせる必要があります。
次に定冠詞をつけた文を見て、訳してみましょう。どちらがどちらを嫌っているでしょうか?
1) Die Katze hasst den Hund.
解答です。"Die Katze hasst den Hund."だと、「その猫はその犬を嫌っている」"Die Katze hasst der Hund."だと、「その猫をその犬は嫌っている」となります。
※ ※ ※
今回は名詞の格について学びました。定冠詞の格変化については、また練習しますので、冠詞の変化(der, des, dem, denなどなど)は覚えなくてもOKです。
ドイツ語の「格」は1格から4格まであることと、それぞれの格の使い方(日本語だと「が/は、の、に、を」、文の中で主語や目的語などの役割を表す)という点だけ押さえておきましょう。
学習を進める上で、「あれ、格って何だっけ?」と思ったときには、またこのページを見直してみてください。それではまた次回、bis zum nächsten Mal!
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